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遠藤周作の名著に読む

遠藤周作は戦国時代から江戸時代にかけてのいわゆるキリシタン時代に強い関心を持ち、小説・評伝などの数多くの作品を残しています。ペトロカスイ岐部を主役にした作品も2作ほど存在します。そのうちの一つである「銃と十字架」のあとがきで、遠藤周作はペトロカスイ岐部を、遠藤はこう評しています。

「彼は今日まで私が書き続けた多くの弱い者ではなく、強き人に属する人間である」(あとがきより引用)

同著者の描く切支丹は、代表作である「沈黙」のセバスチャン・ロドリゴ(実在した神父・ジュゼッペ・キャラがモデルです。ちなみにこの人は、ペトロカスイ岐部が教えを受けた中浦ジュリアンと一緒に拷問を受けて、ひとりだけ棄教した神父です)は、信仰を貫けず棄教した神父です。遠藤は強いものの信仰と弱い者の信仰を対比させるに際して、強い信仰を持つ者のシンボルとしてペトロカスイ岐部を選んだのです。

もう1作の「王国への道」で登場するペトロカスイ岐部は、天上の王国を目指し進む、まじめで信仰心の強い九州弁の神父です。作中何度も登場する「むなしか。富も力もむなしかものぞ。そげんことのわからんとか」というペトロカスイ岐部のセリフが印象的です。